〈2005年11月20日〉
さて久しぶりの秋晴れの休日、昨日は新宿御苑に行きましたが、本日も非常に良く晴れたので、またどこか撮影小旅行に行きたくなりました。どこにしようか、と考えインターネットで近くを調べたら、同じ千葉県の北部にある佐原市が「北総の小江戸」と呼ばれていることが分かりました。見ると街中を流れている小野川という川の付近に、何と江戸時代からの由緒ある建物が多く残っているとのこと。もっと調べたら、日本には「重要伝統的建造物保存地区」というのが43ヶ所ありますが、佐原は関東地区では川越市と並んで、この保存地区に指定されているそうです。
また、ここは日本で初めて日本地図を完成させた「伊能忠敬」の生まれの地でもあります。
と言うことで、もう迷うことなく1人でカメラをかついで、いそいそと出かけました。
自宅の成田から佐原までは東関東自動車道を使ってわずか30分ほどの距離。こんな近くの街がそれほど由緒ある街とはこれまで知りませんでしたので、もうわくわくしながら運転していきました。空は相変わらずスッキリと晴れ上がった綺麗な秋晴れなので、気分はいやでも高揚してきます。
ほどなく佐原香取ICに着きましたので、そこを降りて左折すると、10分ほどで佐原市街の中心部に出てきます。このあたりは「古い街並み」などの看板もあるので迷うことはないと思います。小野川を渡ったすぐの所に駐車場があったので、そこに車を止めます。駐車場では、この古い街並みを見に来る人が多いせいか、無料の案内パンフレットをくれました。それを見ながらカメラをかついで歩き出します。
◆香取街道エリア◆
駐車場の前のメインの道は香取(かとり)街道と言うようです。歩き出したらすぐに分かりますが、この香取街道に沿ってかなり古い建物がいくつか並んでいます。木造の建物、蔵らしいもの、などいくつも並び、1つ1つにいきなり感動すること請け合いです。
大半が江戸時代~明治時代からの店舗であり、現在でも実際に店として営業しているところが感動します。主な店にはノレンがあり、そこには「創業天保元年」などと書かれています。尚、このあたり、年配の方々や外国人の団体さんがたくさん歩いており、結構有名なスポットなんだなあ、と思わせます。
まず駐車場より西側に向かってみますが、そこには「酒造/馬場本店」というのがあり、昔の酒造りの見学自由、などと表示されていました。中には入りませんでしたが、早速昔ながらの伝統を残している店を見ることが出来ました。
酒造/馬場本店
続いていよいよメインの小野川に向かって、香取街道を東側に歩いていきます。この道は街道と言っても普通の道路ですので車が結構走っており、写真撮影は注意しないと危ないです。同様に、道路の向かい側から古い建物を撮影しようとしても、結構車が通り邪魔になるので、辛抱強く車が通り過ぎて道路が空くのを待つ必要もあります。しかしこれだけの素晴らしい光景を撮影するためでしたら、そんなことは全然苦にならないものです。
するといきなり古い建物が街道の左側に並んで見えてきます。木造のかなり古そうな建物。何だろうと思いつつわくわくしながら進んでいきます。
まず手前には洋風の古そうな建物があります。それは旧千葉合同銀行佐原支店で明治の初期に建てられています。
並んでいる古い建物
その隣には木造の古い2階建ての建物が建っています。
これは「福新呉服店」で、創業文化元年(1804年)の歴史ある呉服屋です。この建物は明治25年(1892年)の火事で焼けた後に建て替えられたそうで、見ると正面のノレンには「創業文化元年」と書いてあります。
そのまた隣の古~い建物は蕎麦屋の「小堀屋本店」で、創業天明2年(1782年)、建物は明治33年(1900年)に江戸時代そのままに建築されたそうです。
更に進むと、今度は、やったら古めかしい2階建ての建物があります。なんだか2階に蔵を積んだような格好の建物です。
これは「正文堂書店」で、明治13年(1880年)の建築です。建物は三重に防火設備を施した土蔵作りとなっています。
また、2階にかかっている正文堂の看板は明治29年(1896年)作成で、看板のフチには登り竜と下り竜が配してあります。
このあたりでメインの小野川を一度渡ります。その先にはほどなく小奇麗なレンガ造りの洋館が見えます。
これが「三菱館(旧 三菱銀行佐原支店)」で、大正3年(1914年)の建築です。現在は市に寄贈され中では絵の展覧会などを行なっています。入場は無料なので入ってみましたが、天井は高く、しかし中は意外と狭い感じでした。
近くには、やはり洋館の「蜷川家具店」がありますが、これは建築年度などは不明です。
その隣にちょっと変わったお店がありました。名前は「素顔屋」と書いて「すっぴんや」と読みます。ただ、看板にはやはり「蜷川家具店」とあるので、隣の洋館と同じ店ではないかと思われます。
その近くのあるのは「中村屋乾物店」です。建物は明治25年(1892年)の建築ですが、特徴は当時最高の技術を駆使した防火構造であるようで、壁も分厚く、建築に2年以上もかかったそうです。
この香取街道で最後に見たのは「植田屋荒物店」です。
建物の建築年度は不明ですが、ノレンには創業宝暦9年(1759年)とあります。
店そのものはまだ新しい感じがしたので、結構最近に建て替えたのかもしれませんが、隣にノレンを誇らしげに飾っているのが、とても印象的でした。1759年とは、このあたりでも一番古い店かもしれません。
◆小野川沿いエリア◆
では、いよいよ小野川エリアに進みます。今までいた香取街道を少し戻るとすぐに小野川に掛かる橋がありますので、そこから川沿いに南方向へ歩いてゆきます。それにしても今日は本当にいい天気です。空は青くとても気持ちよく歩けています。
橋のたもとには、やはり古い建物が3軒ほど並んでいます。一番道路側にあるのが「中村屋商店」で、建築は安政2年(1855年)です。道路に面した変形の土地のため、母屋の角の柱を五角形断面にし、部屋の間取りも変形にしているようです。
尚、この橋、伊能忠敬にあやかり、名前は「忠敬橋」と言います。
忠敬橋と中村屋商店(一番奥の古い建物)
さて川沿いに歩くとすぐに「伊能忠敬の旧宅」があります。入場無料で自由に入れるので中に入って見ます。
座敷と炊事場があるだけの小さな家でした。写真撮影も禁止されていないようなので、何枚か撮影し出てきました。昔の人でもこのような狭い家に住むことがあったのですね。イメージは昔の家はとても大きく広いものと思っていましたが。でも敷地は結構広かったです。
でもこの小野川、かなりいい雰囲気を出しています。柳の木が立ち並んでいるし、また、伊能忠敬旧宅前では、舟漕ぎのおばちゃん達がのんびり談笑していました。その光景を見ながら更に進むと、今度は何やら木製の橋がかかっています。
柳が立ち並ぶ小野川
その橋は「樋橋(といばし)」と言い、江戸時代の初期に灌漑用水を小野川の向こうに流すためにかけた樋がもともとで、その上に人が渡れるように板を敷いたため、樋橋という名前になったそうです。
橋のたもとにはこれまた古い木製の時計が立っていました。時計そのものは最新のものに変わっているのでしょうが、昔はどんな時計であったのでしょうか。気になります。
ところでこの樋橋、別名は「じゃーじゃー橋」と言うそうです。と言うのは、時々橋の途中より灌漑用水を下に「じゃ~っ」と流すからだそうです。ちょうど私が通りがかった時に、まさしく流しだしていました。これはラッキー、いい現場を見れたものと喜びました。この樋橋を渡るとすぐ前には、伊能忠敬記念館がありますが、本日は既に疲れかかっていたのでパスします。
さてそろそろ小野川を離れることにします。帰り際に見たら、ちょうど観光客の人たちが舟に乗るところでした。
この舟、何と中に「コタツ」があるのです!
皆、コタツに入ってぬくぬいくしながら川沿いの古い建物を楽しむのでしょう。なかなかオツな雰囲気であると思います。
また、先ほどの忠敬橋を渡った向こう側にも古い建物が続いているようですが、特にそちらには主な建物があるわけでなく、単なる古い民家らしきものが並んでいるようでしたので、もう奥までは行きませんでした。
コタツのある舟
◆観福寺◆
小野川を離れたら最後には観福寺に向かいます。ここへはちょっと距離があるので、車での移動です。
実はこの「観福寺」、伊能忠敬の墓があるとのことですが、それよりもこの時期は紅葉が美しいようなので、紅葉になっていることを期待しつつ行ってみたものです。
境内へ向かう道
小野川エリアより5分ほどで到着したので車を置いて中に入ります。人もちらほらといる程度で静かな寺です。
入ってすぐに見ることが出来るのは、伊能忠敬の銅像です。そしてその右側には本堂があります。問題の紅葉は、やはりまだ少し早かったのでしょうか。かすかに色づいている感じでした。
しかし奥の方に行ってみると、結構綺麗に紅葉になっていたので、感動して写真を何枚か撮りました。うん、なかなか綺麗。
やはり日本の紅葉はいいですね!
シンガポールでは決して見ることの出来ない紅葉。お寺のお堂とのコントラストも見事で、つい見とれてしまいました。もうちょっと遅かったら、もっと綺麗だったろうに、と思うと、ちょっぴり残念です。
奥の方の紅葉は綺麗
ここまでで本日の佐原の古い街並みめぐりはおしまいです。本当ならば、すぐ近くに香取神宮があるので、そこも見れば良かったのでしょうが、本日はもう疲れたので立ち寄らずに帰ってきました。
いやいや、それにしても同じ千葉県内にこんないい所があるとは最近まで知りませんでした。次回は同じ古い街並みで有名な川越にも是非とも行ってみたいと思います。
(2005年11月24日)