スターヒルでの水切りショット

ゴルフを始めて1年位はアイアンではトップボールを良く打っていた。ヘッドアップして上体が伸び上がっているのであろう。なかなか治らず苦労した時期がしばらく続いていた。

しかしこのトップボール、池超えの時は実に威力を発揮するのである。そう、「水きりショット」である。玉に勢いがあるだけに、水面を「ピッ!ピッ!」と切って駆け巡ってゆくのだ。打った瞬間は「あ!トップ!」と思うのだが、水の上を走ってゆくボールを見ると思わず「頑張れ!」と応援することになる。

この水きりショットはあちこちで披露しているので、仲間達は池超えになるとわくわくしながら私のショットを心待ちにしているのである。それもある意味、屈辱ではあるがせっかく楽しみにしているのだから見せないわけにはいかない。うまい具合に水きりになると皆一斉に「行け~!」とか「頑張れ~!」と大歓声が沸き起こる。しかし本人は極めて真面目なので、なぜキチンと打てないのか、と反省しているのだが。

水きりショットを最も多く披露しているのは、何と言ってもスターヒル/ブキットコースの#15池超えショートである。ここは125ヤードの短い何てことのないショートなのだが、私は良くここで池ポチャをやらかしている。魔物でも住んでいる怨念あるホールではないかとひそかに疑っているのだ。そこでの水きりの思い出をここで紹介する。

スターヒル/ブキットコース #15 (スターヒルHPより)

【1回目】

クラブは8番アイアン。慎重に構えるが、まだ池に慣れていないせいか緊張しまくりである。いよいよ振り上げてダウンスイング!
「パ~ン!」、「うわ~!トップだ~~!」と私はわめく。ボールは一直線に池に向かって飛んでゆく。「もうダメだ」と思ったその時である。ボールは水面に当たったかと思うと「ピッ、ピッ!」と勢い良く跳ねてゆくではないか!

仲間が「おおっ!水きりだ!」と騒ぎ出す。私は呆然としながら見ていると確かに勢い良く「ピッ、ピッ、ピッ」と水面上を跳ねてゆく。「よし!そこまで行ったなら向こう岸まで届け!」と叫ぶが、最後の勢いが足りなかった。あと2~3メートルという所でボールの勢いは弱まり、あえなく水中にポチャン、と沈んでしまった。

がっかりしていると仲間達が「惜しかったな、次こそ頑張れ」と訳の分からないなぐさめをしてくれた。私はそれを受けボールに勢いがなかったことを深く反省し、「次回こそ必ずや対岸に届かせるぞ」と固く誓ったのであった。

【2回目】

2回目のチャンスは意外と早くやってきたと記憶している。打つ前のイメージは空に高く上がるきれいな弾道であったが、打った瞬間「うわっ、またトップ!」。ボールはまたもや水面上をピッピッと跳ねてゆく。「よし!今度こそ!」と叫んだせいか、今度は勢い良く進み対岸のふちまで届いてしまった

「おおっ、やった!」と喜んだのもつかの間、そのふちはこちら側に45度も傾いている斜面になっており、スライス回転がかかっていたせいか、ボールはそのまま横に「スルスルッ」と斜面を転がってゆくではないか! 「おお!上まで駆け上がれ!」と祈ったが残念ながら途中で勢いは弱まり、そのまま斜面を下り落ち池にポチャン・・・と入ってしまった。

「・・・・・・・・・・」

残念である。無念である。
せっかく対岸に届いたのに、あと少しの所で池ポチャ。悲しかった。

【3回目】

もうこのあたりになると、仲間達は当然のように水きりショットを期待している。今度こそ三度目の正直、何としても対岸まで届かせなくてはならない。そういうプレッシャーの中、当然のようにトップボールを放ってしまった。

ボールはまたもやピッピッと水面上を駆けてゆく。私も少しは上達したのだろうか。これまでとボールの勢いは違う。はらはらしながら見ていたら、今度は対岸の斜面に「ポンッ」と乗って無事に停止した

「うわ~!やった!ついに水きりで対岸に届かせたぞ!」

いやいや、本当に嬉しい。三度目の正直とは本当であった。仲間達からは「おめでとう」「素晴らしかったぞ」と相変わらず訳の分からない祝福を受けながらグリーンへ向かう。

「るんるん」しながらピッチングも持ってボールへ向かう。うん、確かに斜面に止まっている。とうとう念願かなって水きりに成功した喜びをしみじみかみしめながら、軽~く「トンッ」と打ったのだが・・・。

ボールは真上に上がってゆく。そりゃそうだ。45度の斜面なんだから、ピッチングみたいに寝たクラブで打ったら真上に上がるに決まっているのだが、ビギナーの私にそんなこと、気付くはずがない。「あれ?あれ?あれ?」と思ってボ~ッとみていたらボールはそのまま元の位置に落ちてきて、斜面にはねてそのまま池に向かって「ポチャン」・・・・・・・・。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

しばらく放心状態であった。

ここでの水切りはそこまでであったと思う。今年にはいってからは、トップボールが少なくなったかわりにダフリが多くなってしまったからである。以降はこの#15ではいつもダフってそのままダイレクトに池ポチャしているのである。
悲しい、悲しすぎる・・・。

(2003年10月27日)