胆石で手術・入院

◆胆石発見!◆

不摂生な生活をしながらもこれまで大きな病気をしたことがなく健康であった私も、ついに今回は引っかかってしまいました。
胆石が発見され、摘出手術を受けたのです。

ことの発端はゴルフの練習のし過ぎで左わき腹が痛かったので、レントゲンを撮った時に偶然、胆石が発見されたのです。
もともとゴルフの練習を3月よりほとんど毎日のように行なっていたので、当然体中が痛くなります。
最初は左の肋骨のあたりが痛み、もしかしたら骨折? (実際にあるそうです)との疑いのもとにレントゲンを撮ったことがありました。結果は何でもなく、ただの筋肉痛であったのですが、その後左腕や右手が痛くなり、次には左のわき腹がまた痛くなってきたので、今度こそ骨折ではあるまいな、とまたレントゲンを撮りに行ったものです。

 

病院はオーチャードのPARAGON(パラゴン)という、高島屋の向かいにある大きなビルの10階にある「Japan Green Clinic」です。その名前の通り日本語で診察を受けられるので、医者嫌いの私も行ってみたものです。
(ちなみに今、ここの歯医者にも通っています)。

PARAGON(HPより)

ここの外科のR先生はシンガポールの日本人の間では結構有名な先生で、シンガポーリアンですが日本の医科大学を卒業し、日本語ペラペラの先生です。やはりゴルフが大好きな方で、私が行くたびに「練習はそこそこにしておけよ~、でも軽くならいいよ」といつも言ってくれていました。

で、またレントゲン室に入り写真を撮り出してすぐ、先生が「最近バリウムを飲みましたか?」と聞いてくるのです。「いや、飲んでいません」と答えると「んん?? 何だろう、これは?」と言いながらカメラをぐるぐる回しています。そのうちに他の先生もモニターの前に呼んだりして3人で画像を見ながら首をかしげています。
いや~な予感とともに撮影が終了し診察室に戻ると、先生いわく「胆のうが白く写っている。これは胆石のせいで胆汁が詰まっている可能性があるよ」と言われたのです。
「ガンではないのでしょうね?」と聞いたら、「かなり胆のうが荒れているけど違うよ」と言う事でとりあえずは一安心。しかし調べたら、胆のうガンは発見が極めて困難で、発見された時は手遅れのことが多く、しかもその原因の90%は胆石であることが分かりました。先生は「あせらなくてもいいよ」とは言ってくれましたが、こちらは気持ち悪くて仕方ありません。よって先生の勧めに従って数日後に同じパラゴンの8階にあるローカルの病院でCTスキャンを撮ることにしました。

CTスキャンというのも結構気持ち悪いものですが、何とか終わらせて写真を見ると、予想通り大きな胆石がはっきりと写っていました。大きさは3cmもあり「こんな大きな石を持っていてよくこれまで痛くならなかったね!」と感心されました。
先生は「痛くなければ手術はすぐでなくてもいいが、いずれは痛くなってくるので摘出を薦めます。」と言いましたが、ガンなんかになったら嫌だし分かった以上はすぐやらないと気がすまない性格の私はすぐ手術を受けることとしました。手術なんてのは6才の時に盲腸を取ったくらいですのでかなり緊張しますが仕方ありません。

それにしてもシンガポールの医療レベルは高いですね。
実は日本で数年前の人間ドックでも同じように胆のうが白く写ったことが2年続きましたが、その時の先生は「原因は不明だが痛くなければ様子をみましょう」などと言って、胆石には全く気付いていませんでした。それに対してこちらはレントゲン一発で胆石を指摘したのですから、流石です。

その話をしたらこちらのR先生、それはとんでもないヤブ医者だ! 胆石を放置しておいたら突然痛み出してとても危険な目に合っていた可能性があったんだよ!」と怒っていました。危なかったのですね。
それを聞いてその病院、千葉県の京成電鉄の船橋と津田沼の間にある谷津駅前の「Y保険病院」には今後絶対に行くもんか、と固く誓いました。(当時はその病院で毎年人間ドックを受けていました)

いずれにせよ手術は8月10日の土曜日と決めました。入院は4日ほどですむそうです。

◆入院◆

いよいよ入院の日がきました。
病院は施設の関係で、オーチャードの西部、植物園の近くにある「Gleneagles Hospital(グレンイーグル病院)」という非常に大きな総合病院です。
執刀する先生は、Japan Green Clinic の先生より紹介されたローカルの落ち着いた紳士でしたので取りあえずは一安心。しかしローカルの病院なので、内部では日本語は一切通じませんが、ま、何とかなるか、ということで8月10日の朝8時に奥さんと2人で行きました。尚、この病院の中にも日本語OKのクリニックがあります。

まず受付で入院手続きをすませます。入院に当たっての各種契約とか手術の承諾証とか色々な書類にサインしたりして、手続きは30分もかかってしまいました。
部屋はどのタイプか、と聞かれたので、こちらで相部屋というのも嫌なものですから個室としました。
料金を見たら、相部屋の場合は1泊S$170(1万2千円)、個室は一泊S$388(2万7千円)も取られます。へたなホテルよりもずっと高いですね。まあでも室料は全て海外の健康保険が出るからいいか!とここは個室を奮発。尚、ついでに見たらスイートルームとかもあって、一番高いのは一泊S$3500(24万5千円)!なんていうのもありました。驚きです。

手続きが終了した後は9階の病室に案内されました。やはり個室で正解です。結構広くてテレビとか洗面台、シャワー、トイレもついているので快適に過ごせそうです。

グレンイーグルの病室から見た風景 正面の森は植物園

奥さんと話をしていたら間もなく看護婦さんが来て、下着から全てを脱がされて薄い手術着1枚に着替えさせられ、下の方へ行って、心電図や血圧、血液測定等の手術前の検査を受けました。また部屋に戻ってきたのが10時。手術は11時半スタートなので、それから1時間ばかりはのんびりしていました。

◆手術◆

11時になると、いよいよ手術ということで何人かが迎えに来ました。テレビでよく見る台車付きのベットにまず乗り移り手術室まで連れていかれます。このベット、ガラガラと意外と早く動くもので、体が滑っておっこちないか、などと余計な心配までしてしまいました。
手術室は4階です。大きな曇りガラスのスライド式の自動ドアが開けられ私はその中に運ばれました。奥さんはその外のソファで待っているように言われています。ドアがしまるとその中は待機所になっていて、先にはいくつかの手術室のドアが見えます。
ここでまた最後の血圧測定とかを受け、アレルギーはないか、等、いくつかの質問も受けました。
このあたりで流石にものすご~く不安になってきます。

手術は胆のう摘出とは言え、おなかを切ることはなく、小さな穴を4箇所開けて内視鏡で中を見ながらマジックハンドで摘出するという簡単な方式なようで、1時間程度で終わるとのことです。このあたりの技術もシンガポールの外科技術は進んでいるようです。

少し待たされた後、いよいよ手術室の中に入ります。
中はエアコンがきいていて非常に寒かったですね。無影灯は昔は10cmくらいの電灯がたくさんついた大きなお椀形だったと記憶してましたが、現代のそれは1mくらいの傘みたいなもので、青く光るようになっていました。

そんなことを考えていると先生が入ってきて「これから全身麻酔をかけます。あなたは深い眠りに入り、目が覚めた時には手術は終了していますよ」と言われ、左手の甲の上に注射をされました。
全身麻酔は初めての経験なので気持ち悪かったのですが、いつしか私は深い眠りに入っていきました。。。

◆ 手術無事終了◆

何時間寝ていたのでしょうか。目が覚めたときは確かにもとの病室にいました。
横で「あ、起きた」という子供の声が聞こえてきます。手術中に2人の子供も病院に来ていたようです。ベットから起き上がろうとしましたが、まだ麻酔が残っているようで体がしびれてうまく動きません。聞いた所、3時間は寝ていたようです。おなかにはさほど痛みは感じません。

間もなく看護婦さんが来て「手術は無事に終わりましたよ」と言ってくれたので一安心です。
摘出した胆のうも標本みたいにパックに入れられて置いてありました。白くて気持ち悪かったですが、これは記念に自宅に持ち帰ってきています。胆石は予想以上に柔らかくて、摘出は簡単に終わったそうです。

少し時間が経過したら起き上がれるようになったので早速おなかを見て見ると、確かに手術で開けたと思われる小さな4つの穴の跡がありました。1つはおへそ、1つはその10cmくらい上、あとの2つは右側にあります。
今日は流石に動く元気もなく、夕方には家族を帰して早めに寝ることとしました。

◆入院期間◆

翌日から体力が回復するまで4日間の入院となりました。
はっきり言って「実にヒマな毎日」でした。
家族は毎日お見舞いに来てくれますが、やはりヒマなのでいてもせいぜい2時間。あとの時間はヒマそのものです。

入院体験は子供の頃の盲腸以来でしたが、やはり病院ですね。毎日朝から夜まで5回くらい看護婦さんが巡回し、血圧と体温を測っていきます。先生の問診も毎朝ありました。手術をしてくれた先生はもちろん、Japan Green Clinic のR先生もわざわざ毎朝見に来てくれましたのでありがたかったですね。その先生とは会うたびにゴルフの話をしていました。

 

意外だったのは病院食が非常に良かったということ。日本でも何回かお見舞いとかで病院に行きましたが、その食事を見るととても食べられそうもないマズそうなものばかりでしたので、これは嬉しい誤算です。

ホテル並みに、ジュースの種類、コーヒー、メインディッシュ、スープ、パンの種類とか色々と選べる上、味もまあまあ。デザートのフルーツまでついています。
病院食はマズいもの、と最初に覚悟していたので大助かりでした。
とにかくヒマな毎日だったので、これを食べる楽しみは大きいものがありました。

 

その他の時間はテレビを見たり本を読んだりして過ごしていました。
テレビは当然ローカル放送のみなので英語の音声で中国語の字幕。
さっぱり分かりませんが、アクションものや映画を見ていました。以前に見たような映画もいくつか放送していたので懐かしい感じがしました。

本はゴルフの本、コミック本、好きな清水一行の単行本とかをたくさん持ってきてもらって読みまくりました。こんなに本を読んだのも久し振りです。

 

 

また、看護婦さんたちもずいぶん気を使ってくれました。
最初は英字新聞を持ってきましたが、私が日本人と分かると翌日からは日本語新聞(朝日新聞)を持ってくるようになったのです。この心遣いは嬉しかったですね。日本語新聞はシンガポールでは結構高いはずなのに。今でも感謝しています。

ところで手術の翌日から早速困ったのは喫煙です。何と言っても1日に30本は吸うヘビースモーカーの私には、喫煙も出来ない病室にこもっていることは耐え切れません。こっそり吸うとどうせ高~い罰金が待っているのだろうし。
叱られるのを承知で看護婦さんに「タバコは吸えませんか?」と聞いたら、「困った人ですね~~」という感じで喫煙可能場所を教えてくれました。

そこは Gardenと呼ばれる5階のエリアで、屋外に簡単な公園を作ってあるのです。ちょうどロビーの真上のあたりになります。木や花が植えてありベンチまであるので、ちょっとした息抜きには最高の場所で、そこなら喫煙可能とのことでした。
早速行ってみました。まだ体が少し痛むのでエレベータに乗ってゆっくり歩いていきます。病院の中ということなので、当然パジャマ姿、スリッパのままです。5階のエレベータをおりるとすぐ Gardenへのドアがあります。外に出て見るとまさしくそこは Gardenです。結構広くて気持ちのいい空間で、外の空気はおいしかったです。

部屋から見下ろしたGarden

 

早速ベンチに座ってタバコ1本に火をつけました。
久し振りに吸った最初の1本は本当においしかったですね。
本当はこれを機会に禁煙してみようかな、とも一時は考えましたが、結局また吸ってしまいました。しかし流石に入院中は本数は減り、5日間で1箱半しか吸いませんでした。

この Gardenには家族もよく連れて行きました。
1日中病室にいると息が詰まりそうなので、ちょくちょく喫煙も兼ねて行ったものです。昼間は流石に暑いですが、朝夕は風が吹いてとても気持ちのいい空間です。こういう病院の中にこういう場所を作っている所は、環境に気を使うシンガポールらしいな、と思いました。

 

私がヘビースモーカーということは看護婦さんたちにもすぐ有名になってしまいました。各フロアのエレベータの近くには看護婦さんたちが常駐しているレセプションがあります。最初は喫煙に行くたびに「タバコを吸いにGardenに行きます」と断って行っていましたが、2日目からは私が近づくたびに看護婦さんは「smoking?」と聞いてくるようになりました
それで続けて2本吸って戻ってくると「ずいぶん早いですね、1本しか吸わなかったの?」「いや、2本吸ったよ」「オ~早い」などという会話をいつもしていたものです。
退院する直前などは「最後の問診や手続きがあるのでタバコは我慢して部屋にいて下さいね」などとも言われたりしました。

もう1つ面白い話がありました。
入院2日目のこと、突然病院のおじさんが部屋に入ってきて何やら訳の分からない言葉で話しかけてきます。どう聞いても英語ではなく首をかしげていると、そのおじさん、今度は何と英語で「Aren't you Indonesian ?」(あなたはインドネシア人ではないのか?)と聞いてくるではないか!! 確かにゴルフ焼けで顔はずいぶん黒くなっていましたが、インドネシア人と言われたのは初めてです。
私がキョトンとしている間に、隣で奥さんは腹を抱えて転がりまわって笑いまくりでした。

◆言葉の問題◆

シングリッシュ 英語 意味
レジッ allergy アレルギー
cough 咳(せき)
イッジェクショ injection 注射
ブラド・プシャ blood pressure 血圧
ゥ・ストッ gall-stone 胆石

言うまでもなく入院中は言葉は全て英語です。私はもともと英語が全くダメでありましたが流石に1年もシンガポールにいると、少しはシングリッシュがわかるようになってきました。でも医学専門用語は難しそうでどうなることやら、と思っていましたが、何とかなってしまうものです。
まず最初の入院手続きでの30分はず~っと英語でしたので、少々苦労しました。また、問診等で良く使われた言葉は表の通りでした。
この病院は皆、結構綺麗な英語を話すので分かりやすく助かりました。もしバッチバチのシングリッシュであったら、この単語も聞き取れなかったかもしれません。

◆退院◆

5日目の8月14日、いよいよ退院となりました。
とにかくヒマであったので朝の先生の問診で「今日退院していいよ」と言われた時は本当に嬉しかったですね。
午後2時頃に退院する予定で朝から準備をしました。それまでの間に、看護婦さん、トイレ掃除に来てくれた人、いつも食事を持ってきてくれた人、に挨拶をすませておき、午後奥さん、子供が来たときに一緒にタクシーで帰りました。

久し振りに服を着て外に出た時は、外の空気はこんなにうまいのか、という感激がありました。
まだ完全に回復したわけじゃないので、今週の土曜日と来週火曜日に医者に来い、と言われていますので、今週は会社を休んで自宅でのんびりしています。
また、好きなゴルフも1ヶ月は禁止のため、仕方ないので本を買い込んできて家でゴルフの勉強をし、普段やらないパターの練習でもしていようかと考えています。

こうしてわずか5日間の手術・入院体験は終わりました。
まさかシンガポールに来てまで手術・入院するとは思ってもいなかったので、ある意味貴重な体験かもしれません。
毎日意識して歩くようにして、早く体が回復するようにしてゆきます。

(2002年8月15日)