親切なシンガポーリアン

シンガポーリアンは8割以上が中国系なので周りは中国人ばかりに見えます。それだけに見た目の雰囲気は日本と非常に良く似ていますが、人々の性格は基本的には中国人と同じなので、私は自分勝手で無愛想な人が多いのだろう、と当初は思っていました。
確かに60才過ぎた年配の方にはそういう方も多く、街中で体が触れても謝らない人や大通りを平気で自転車でゆっくり走るおじいさん(これ、非常に迷惑!)とかもチラホラ見かけます。そこで「ここは所詮中国と同じか」という風に当初はあまり良くない印象を持った時期もありましたが、生活しているうちにそうではないことがだんだん分かってきました。

今時のシンガポーリアン、特に若い方は優しくて親切、他人へ思いやる人が多くいるのです。何度か助けてもらったことがありますので、その事例を紹介します。

◆その1◆

あれは私が赴任してすぐの頃です。当初の2週間はホテル住まいで奥さんのみ同行してくれ、2人でシンガポール生活をスタートさせました。最初の休日の土曜日はコンドミニアム探しで一日つぶしましたが、翌日の日曜日はフリーなのでマリーナエリアへ2人で買い物に行きました。しかしいざ行ってみたら中は非常に広くて目指す店がどこにあるかさっぱり分かりません。しばらく2人でうろうろしていましたがどうにも分からず途方にくれており、仕方ないのでたまたますれ違ったシンガポーリアンの40才くらいの女性に場所を尋ねてみました。

その女性は早口のシングリッシュで教えてくれましたが何と言っても当方はまだ来たばかりなのでシングリッシュまほとんど理解出来ません。何度か聞き返したりしても理解出来ず困った顔をしたら、その女性は「付いてきなさい」と言ってすたすた歩き出します。その女性はわざわざ5分くらい私たちのために先導して歩いてくれ、目的地まで案内してくれました。丁寧にお礼を言ったら「気にしないで」という感じで笑顔で去って行きました。その時の爽やかな笑顔は今でも非常に強く印象に残っています。

赴任当初奥さんと2人で滞在したオルソンホテル

◆その2◆

昨年2002年4月に家族を呼び寄せこちらで一緒に生活を始めましたが、当初は家族もシンガポールに不慣れなためよく道に迷っていました。ある日、奥さんと2人の子供たちでCITYの北部、アンモキオという所に出かけたようですが、その帰りにバスで帰ろうと思いバス停まで行ったところ行き先がたくさんある大きなバス停であったようで、家に帰るのにどれに乗ればいいか分からず困っていたことがありました。

3人で停留所の案内板を見ながらうろうろしていたら、シンガポーリアンの高校生くらいの2人の女の子が「どうしましたか」と話しかけてきたようです。「ティオン・バルまで帰る方法が分からないんだけど」と答えたところ彼女らは色々調べてくれて、どのバスを乗り継いで帰ればいいか教えてくれたとのことでした。

しかも、目的のバスが来るまで待っていてくれ、そのバスが来た時に「これに乗ってXXXで降りるのですよ」と教えてくれ、更にはバスの運転手に「この方たちをXXXでおろしてあげて下さい」とまで話してくれたそうです。家族はお礼をいいながらバスに乗り込みましたが、発車してもしばらくその女の子たちは手を振りながらバスを見送ってくれていたそうです。

◆その3◆

これはつい最近、2003年2月に日本よりおじさんとおばさんが遊びに来た時のことです。
夕食を私の家族と一緒に食べようということになり、6人でMRTに乗ってボートキーに行くこととしました。ラッフルス・プレイスの駅でおりて地下道を歩きましたが、ちょっと間違えていつもと違う出口で地上に出てしまいました。でもこのあたりは何度も来ているので道に迷うことはないだろうと思って「こちらですよ」と言いながら歩いていたら、ボートキーではなくビル街に迷い込んでしまいました。「あれ、おかしいな、きっとこっちの方だろう」などと思いながらそのあたりをうろうろすること5分以上、とうとう完全に迷ってしまいました。このあたりはビジネス街なので夜は人通りが少なく、人に聞くことも出来ず少々困ってしまいました。

その時、向こうからシンガポーリアンの若いカップルが歩いてきたので「ボートキーに行きたいのですが、どの方向へ行けばいいのでしょうか」と問い合わせたところ、彼らは「言葉で道を教えるのは難しいので案内してあげます。ついて来て下さい」と言って案内してくれました。途中で私はシンガポールに駐在して1年半経過したことや親戚が日本より遊びに来たのでボートキーに案内する途中で迷ってしまったこと、など色々とわいわい話しながら案内してもらいました。

時間的には5分くらい歩いたでしょうか。無事にボートキーに到着することが出来ました。どうもMRTより地上に出た時に反対方向へ出てしまったようです。そこで彼らは「すぐそこですからもう大丈夫ですね」と言って去って行きました。丁寧にお礼を言ったのは言うまでもありません。わざわざ我々のために時間を割いて遠回りをしながら案内してくれたこのカップル、やはり笑顔が印象に残っています。心底感謝です。

ボートキーのレストラン街


以上のように本当に親切なシンガポーリアンが多いことは、ちょっとした感動です。困った人を見るとずいぶん時間を掛けて色々助けてくれ、しかもわざわざ遠回りしてまで道案内してくれるなんて、日本では考えられないことです。特に若い親切な彼らが中堅層になる20年後にはシンガポールはもっといい国になっていることでしょう。

(2003年2月28日)