1991年頃であるが、デジパチにハマった私は、当時は成田の隣町の多古(たこ)町にある「パールショップともえ」にせっせと毎週通っていた。この「ともえ」は千葉県を中心とした大型チェーン店で、多古町のそれは当時出来たばかりの大型で綺麗な店であり、そこそこ出ていたので毎週のように通っていたのであった。
パールショップともえ 多古店
やはり毎週通うと、同じ顔をいつも見ることになる。つまり常連さんである。私もかくいう常連の1人であったので、互いに名前は知らないが顔なじみということで、隣の台に座った時などは、この台は昨日は出たとか、あの台は今日は出ないだろう、とか情報交換を良くしたものである。
その頃は、現金機の保留玉連チャン機が主力であり、私はSANKYOの フィーバーシリーズのドラム式の台を良く打っていた。その時もやはりドラム式の台で保1連チャン機であるフィーバースパークCXを打っていた。この台は過激な連チャンが魅力で、いつも8割~満席の人気台であり私も好きだった台の1つである。
結構お金を突っ込んで、ようやく当りが来た。喜んで出していると、隣にいた常連のオヤジが、何と突然、私の出玉をガバっと一握り取って行くではないか!
「何だ、何だ?!」と思って驚いてみていたら、そのオヤジさん、取り上げた私の玉を、
「おい、当たり玉だ、当たり玉だ!」
と言いながら、周囲の常連さんにわけているではないか。
オヤジいわく、「この当たり玉を打てば皆大当りがすぐくるぞ!」と言いながら周囲にわけていたのであった。それを聞いて、玉を取られた怒りを忘れ、思わず笑ってしまったのであるが・・・。
不思議である。
そのオヤジが私の当たり玉をわけてあげた人たちに、ボロボロと大当りが来るではないか。
なぜか分からぬが、本当にその当たり玉をもらった人たちの台に大当たりが続々と来たのである。そうすると今度はそのオヤジさん、大当たりした人の台からまた玉を一握り取り上げて、私にも「おい、兄ちゃん、当たり玉だぞ」と言ってわけてくれたのである。そうしたら本当に私の台にまた大当たりが来たのである。
見ているとそのオヤジさん、自分で打ちながら周囲の大当たり状況を見ており、誰かが大当たりするたびにその人の玉を取り上げ、周囲に「当たり玉だ」と言いながら配っていた。もらう方はそれで自分も大当たりするもんだから感謝感激である。そのオヤジさんは2時間ほど、そうやって玉を配り歩いていたのであったが、肝心の自分の台には全然大当たりが来ない。
そのうちに「何だ、何だ?! 皆、大当たりしているのに俺の台だけ当たらないじゃないか!」とわめいて、すごすごと帰っていったのであった。
皆に感謝されていたそのオヤジさん、時々その店に出没していたが、いつも負けてばかりいたせいか、そのうちに姿を見ることがなくなった。今はどうしているのか、私もその店にはしばらく行ってないのでわからないが、もしかしたら今でも「当たり玉だ」と言いながらその店の中を徘徊しているかもしれない。
(2006年10月22日)